魚のいろいろ話
魚の脂焼けは危険!!
「脂焼け」とは、油脂を多く含む魚の干物・煮干し・冷凍品などを長く保存したときに、その表面が赤や黄褐色になり、焼けたような外観になることをいいます。これは、油脂が酸化分解されることにより生じた不飽和アルデヒドにトリメチルアミンやアンモニアなどの揮発性塩基が作用して起こるものです。「脂焼け」を起こしている食品を食べると、食中毒症状を起こすことがあります。軽い場合は軽い腹痛、重い場合は嘔吐、下痢、腹痛です。
煮干しのうま味とは?
「煮干し」とは、薄い食塩水で煮て乾燥したものの総称ですが、一般的にはだし材料に用いられる「いわし」を指すことが多いようです。「かたくちいわし」、「まいわし」、「うるめいわし」を原料とし、たんぱく質とカルシウムに富んでいます。「煮干し」から取っただしは、魚の生臭みが出るので吸い物や材料の持ち味を生かす料理には適しませんが、みそ汁など濃厚な味を出すものや、惣菜用の煮物に使います。
白身の魚は加熱するとなぜほぐれやすいか
「かれい」や「たら」など白身の魚は加熱すると収縮し、脱水して柔らかくなり、ほぐれやすくなってきます。しかし、「まぐろ」や「かつお」は同様に加熱しても、身が締まって固くなります。「かつお」などは、筋形質たんぱく質の割合が多いので、加熱によって凝固し、つなぎの役目をするため固くなるのですが、「かれい」などの白身の魚では、筋形質たんぱく質の中に熱凝固しない成分があるので柔らかいのです。また、魚肉を加熱すると身がはがれやすくなるのは、筋形質たんぱく質同士を結び付けている結合組織が溶解するためです。
いかを加熱するとき、なぜ切り目をいれるのか
「いか」の組織は、筋肉組織が体軸に直角に走り、その肉を結合組織が仕切っています。また、表面の皮は四つの層からなり、すぐにむけるのは第一、二層の比較的厚い皮で、第三層はむけにくく、第四層はコラーゲンによってかなり強く、非常にむけにくくなっています。「いか」を加熱すると、体軸方向に丸まったり、横に裂けたりしやすいのは、「いか」のそうした構造によるものです。「いか」を加熱するとき「かのこ」や「松笠」のように切り目を入れるのは、「いか」が丸まったりするのを防ぐためと、第四層が固いので食べやすくするためです。また、「いか」は加熱すると30%以上も脱水し、固くなりやすいので、短時間で調理してください。
えびを揚げるときは
「えび」の水気は取れているはずなのに揚げると水がはねることがあります。「えび」の尾は袋のようになっていて、その中に水を含んでいるので、油はねの原因となっています。「えび」を揚げる前に、尾の先を少し切り落として、包丁で水をしごき出すとうまくいきます。
あらいはスピードが大切
あらいは刺身の一種で、そぎづくりにして冷水で洗い、身を収縮させてその歯ざわりを楽しむものです。生きている魚か、魚の死後できるだけすみやかに行なうのが条件ですが、筋肉のPHの値が中性に近いほど収縮量が大きくなるので、PHが中性に近い魚が適しています。また、グリコーゲンの少ない魚のほうがよく収縮します。グリコーゲンが多いと解糖作用が盛んになり、乳酸が生じてPH値が酸性に近くなります。一般に赤身の魚はグリコーゲン量が多くて、あらいには適しません。
さけ缶の表示について
「さけ缶」は缶詰の中でも、「かに缶」と並んで大変ポピュラーなものです。アウトドアでも手軽に使え、応用範囲も広いからでしょう。店頭で目玉商品として「さけ缶」の安売りがありますが、これはほとんど「カラフトます」です。味は「しろざけ」「べにざけ」よりも落ち、中の切身の見栄えも悪いものです。買うときは缶に打ってある刻印を確かめて買うとよいでしょう。刻印の最初が「CS」なら「さけ」、「PS」は「ピンクサーモン」の略で「ます類」、「RS」は「レッドサーモン」の略で「べにざけ」を表します。なお、次に「N」と打ってあるものは「水煮」を表し、「S」は「くんせい油漬け」を表します。「T」は「くび肉」、「E」は「尾肉」、「M」は「雑肉」を表します。
例) CSNT→さけくび肉水煮、CSS→さけくんせい油漬け
海の体操選手たち
「たちうお」の名の由来は、立ち泳ぎをするからとか、姿が太刀(たち)に似ているからだとか、説が分かれています。いずれにしても、「たちうお」が立ち泳ぎをするのは事実です。さて、その上をゆく立ち泳ぎの名人が「たつのおとしご」。見るからに食べられそうにありませんが、時折幼魚がしらす干しに混じっていて、いつのまにか口に入ることも。たんねんに探すと、「かに」、「いか」の幼生とともに見つけられるでしょう。もっと奇妙なのが「へこあゆ」。相模湾から南の沿岸にすむ、10cm前後の小魚で、同じ立ち泳ぎでも終始さか立ちです。直倒立でくるりと方向転換をする、いわば海の体操選手というところ。
出世魚
成長期によって呼び名が変わる魚を「出世魚」といいます。「ぶり」は関東では「わかし」→「いなだ」→「わらさ」→「ぶり」。関西で「つばす」→「はまち」→「めじろ」→「ぶり」。「すずき」は、「こっぱ」→「せいご」→「ふっこ」→「すずき」。しかし、この境界線は厳密なものではありません。魚は同世代で集団をつくりやすいので、「せいご」の群れ、「ふっこ」の群れなどと見分け、呼び分けています。これら、呼び名の変わる魚を「出世魚」とたたえるのは、魚食民族である日本人ならではのものです。
魚の運動能力は?
魚の運動会を開くと、高跳びでは「ぼら」がいい線まで行くでしょう。助走が少しあって、約2m。落ちるときはお腹で水面を直撃。幅跳びはけたはずれで「とびうお」の約400m。競泳では「ばしょうかじき」で、時速約100km。二番手は「まぐろ」で70km。逆に遅さを競うなら、「たつのおとしご」にかなう魚はまずいません。時速16m。1秒間に4~5mmです。
貝類のコレステロールは?
「コレステロールが多いから、貝類は控えたほうがよい」というのは迷信です。確かに貝類はコレステロールに似た、6種類の成分を持っていますが、そのうちの3つは、逆にコレステロールの吸収を防ぐ物質です。貝類の持つ悪いコレステロールは、「かき」の場合、100g中に76mgで、卵に比べると約1/3。そのうえコレステロール値を下げるタウリンを豊富に含んでいます。また貝類にはビタミンB12・Dが多く、タウリンとともに、おもに内臓に含まれているので、内臓ごと食べる「あさり」、「しじみ」、「さざえ」などは、心配などころか、むしろ毎日食べてほしい栄養食品なのです。
エスカルゴとかたつむり
童謡に歌われる陸上の貝、「でんでん虫」。実は大害虫の一つで、畑の野菜を食い荒らします。一方「エスカルゴ」は、フランスはブルゴーニュ地方の食用かたつむり。大珍味ですが、上記の理由で生きたものの輸入は禁止されています。レストランの「エスカルゴ」は、肉と殻を別々に輸入し、料理のときに合せたもの。日本の「かたつむり」については、食べると気が狂うとか、はれものの薬だから串焼きにして食べる、とか諸説粉々。まずは食べないほうが無難。
日本の三大珍味
日本の三大珍味とは、愛媛県知多半島の「このわた」、長崎県野母半島の「からすみ」、福井県の「越前うに」。「越前うに」の代わりに「うるか」(あゆの卵巣)をあげる説もあります。ちなみに、世界の三大珍味とは、「キャビア」(チョウザメの卵の塩漬け)、「フォアグラ」(ガチョウを飽食させ肥大化させた肝臓のペースト)、「トリュフ」(雌ぶたに匂いをかがせて地中から掘り出す松露に似たキノコ)
刺身のつまも食べましょう
刺身のつまについている海草は、たんなる飾りではありません。海草特有のぬめりの成分であるアルギン酸は、赤血球の凝固を防ぎ、コレステロール値を下げ、高血圧の予防に大切な働きをします。海草はノーカロリーでアミノ酸も多く、ビタミンA、B2、B6、カルシウム、ミネラルが豊富ですし、魚は生で食べると最も消化がよいなど、刺身と海草はよい食べ合わせとして申し分ないものです。また、肉料理には、「ひじき」を食べ合わせると、肉のコレステロール排出に効果的です。特に、中年過ぎの人の胃腸には、生野菜をたくさん食べるより、「ひじき」の煮つけのほうが負担が少なくてすみます。
干物をもどすときは短時間で
干物はもどしたりして調理しますが、水につけたとき、栄養素が溶け出してしまうので気を付けましょう。「わかめ」、「ひじき」、「こんぶ」などはすぐれたアルカリ性食品で、カルシウムを多量に含んでいます。干した海藻類を常温で30分でもどすと、カルシウム溶出率は、「ひじき」が20~30%、「こんぶ」、「わかめ」が6~10%強です。浸水時間が長くなければ溶出率は高くなり、温度も高いほうが多く溶け出します。ただし、「こんぶ」は例外で、5分で9%、30分で10%、1時間でも10~11%と時間の長さによる差はほとんどみられません。
エビやカニをゆでるとなぜ赤くなるのか
「にんじん」、「かぼちゃ」などの緑黄色野菜や、「えび」、「かに」などの甲殻類は、カロチノイドという橙黄色の色素を大量に含んでいます。いわゆる「カロチン」です。このカロチンには大まかに分けて、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)の三種があり、なかでもは体内でビタミンAに変わる重要な栄養素です。「えび」や「かに」のカロチノイドは、アスタキサンチンといい、生きているときにはたんぱく質と結合しているため、褐色に近い色に見えます。生きた「えび」や「かに」が必ずしも赤くないのはこのためです。これを茹でると、熱によってその結合が切れ、赤い色が現われます。そしてアスタキサンチンは空気中の酸素の働きで、アスタチンというさらに赤い色素に変化し、より鮮やかな赤色になるわけです。
まな板のこい
「こい」は川魚の王です。大きさ・姿はもとより、味がすぐれ、そのうえとてもいさぎよい。生きた「こい」をまな板にのせ、包丁の背でひとなですると、それまで暴れていたものがぴたりとしずまり、あとは板前のなすがままに料理される。このあたりから、もうどうともなれ、いっさいおまかせします、という意味の「まな板のこい」がうまれました。